今季絶望クラス

 5月11日のヤクルト-巨人戦で負傷交代していたヤクルトの塩見泰隆外野手が、左膝の前十字靭帯と半月板を損傷していることが球団から発表された。負傷の度合いから長期離脱は避けられず、超混戦のセリーグとはいえいまひとつ調子に乗れないヤクルトには痛すぎる現実だ。そんな塩見外野手をめぐっては、「幻の話」の存在がひそかにクローズアップされているのだという。

 塩見外野手は11日の巨人戦に1番センターで先発出場。初回の第1打席でショートに内野安打を放ったが、左足で1塁ベースを踏んだ後に転倒。そこから自力で立ち上がることができず、担架で退場となった。そして12日になって球団から「左膝の前十字靭帯損傷と半月板損傷と診断された」との発表があった。

 塩見外野手が1塁を駆け抜ける映像を確認すると、左足がいびつな方向に曲がっていることがわかる。故障の度合いを踏まえると、「手術や長いリハビリが待っていて、今季絶望クラスの大きなケガ」のようだ。

ケガが少なくない選手

 塩見外野手は4月27日の阪神戦で先頭打者ホームランを放ったが、その裏の守備に付くことはなかった。その後、腰の張りが原因だと明かされていた。

「これまでも塩見はケガが少なくない選手だとされてきました。野球に限ったことではありませんが、故障をしがちなアスリートとケガとは無縁な選手とがいます。故障をしないタイプっているんですよね。元々身体が頑丈なのか、全力でプレーしていてもどこかでうまく力をセーブできているのか、身のこなし方が良いのか、よくわからないですが。柔軟性はあった方が良いのでしょうが、身体がすごくかたくても不思議と故障をしないタイプもいて、そこはミステリーですね」

 と、担当デスク。

「塩見は走攻守揃った才能の塊のような選手で、ヤクルトの2021・22年のセリーグ連覇に大きく貢献しました。が、昨季はケガに泣き、53試合の出場に留まり、チームも最下位の中日とゲーム差なしの5位と低迷しました」(同)

ヤクルトと塩見の成績がリンク

 ここ数年に限れば、まさにヤクルトと塩見外野手の成績がリンクしているかのようだ。

「とにかく守備範囲が広くて右翼や左翼の守備範囲を“侵食”してしまう高い危機管理能力を持っています。対戦相手にとってはやっかい、味方にとっては極めて頼りがいのある選手であることは間違いないでしょう」(同)

 そんな塩見外野手をめぐっては、つきまとってきた話があるのだという。

「トレードですね。ケガをしがちな選手だという評価は以前からあって、良いタイミングで放出すれば、ヤクルトにとって喉から手が出るほど欲しい有力な投手が獲得できるのではないかとの見方があったようです。頭の体操レベルだった可能性もありますが。ケガで十分な出場機会のなかった昨季以前にもそういったシミュレーションはあったのかもしれませんね」(同)

 投手陣に不安要素を抱えているヤクルトにとって、計算できるローテーション投手が1枚いればなぁという嘆きは少なからずあることだろう。

難しい判断

「そうは言っても、塩見をトレードで放出することへのファンの反発も想定されたでしょうし、その実力に見合う投手がタイムリーにいなかったということもあるのかもしれません。当たり前の話ですが、ケガがちではあるけれど、今後いつどのタイミングでどれくらいのケガをするのか、あるいはしないかについては誰もわからないことです。その意味でもトレードするのは難しい判断だったことでしょう」(同)

 ファンならずとも塩見外野手がケガから回復し、以前のようなリードオフマンとしての活躍を望みたいところ。一方で球団側が常に冷静に戦略を練る必要があるのもまた事実だろう。

デイリー新潮編集部